岸田文雄さんは、個別に話せば実直で話しやすい政治家。しかし演説や答弁に立つと話がつまらなくて心を揺さぶらない。その岸田さんが総裁選出馬を表明した。
　岸田さんにしては良かったと思う。国民の声をノートに書き留めてきたという話、そして役員任期を制限して権力集中を防ぐと述べたあたり。
　話がつまらない岸田さんにしては人柄が表れる話だったし、山口３区をめぐり火花を散らす二階幹事長に公然とたてついた点も評価できる。
　岸田派は４７人。去年の総裁選では国会議員票で８９票もとった。誰かが票を回したとの話もあるが、菅に批判的な声が増えた分、大幅に上積みできるかも。
　それでも岸田さんの勝つ確率は低い。奇跡を起こすにはニュージーランドのアーダーン首相のように自分の言葉で訴えることが絶対的に不可欠だ。
　コロナ対策でアーダーン首相は明確に目標を示す。そのうえで生活に犠牲を強いることを認め、ともに耐えて前に進もうと語る。政治家というより学校の先生。
　台湾の蔡英文総統も語り口は政治家っぽくない。岸田さんが彼女らに学び、ダメな菅を他山の石にすれば、支持は拡がると思う。（写真：時事、産経）